はじめに

●開催のたちあげからこれまで

福島南会津伊南教育委員会主催事業「雪中ギャザリング」。
村と東京の子どもとの異文化交流をテーマに春休みに開催してきました。伊南とは20年のおつきあいになります。2011年春休みに開催予定していた福島の企画は中止となり、震災後の福島では原発事故から、子どもたちの遊びの環境は閉ざされていきました。

2011年秋、コールマンジャパン(株)のご協力により、雪中ギャザリングに参加予定していた子どもたちを、冒険キャンプに招待することができました。
原発事故により伊南に一時避難をしている小学生、南会津の子どもたち。震災後、親子共々離れることが不安だった家族のみなさんにとって、他県に泊まりがけの参加は「勇気と決意」のいることでした。
親は子どの未来を願います。「子どもの存在は未来そのもの」南会津のソーシャルワーカー星広美さんと共に、子どもが安心して参加できる関係性を築いていきました。保護者の方からは「震災から、子どもを手元から離すことが怖くて、子どもの行動範囲を狭くしていました。けれど、思い切って富士山へ出すことができ、キャンプから帰ってきた子どもの生き生きと元気な表情に触れ、経験はなによりの力になることを痛感しました。」と感想を頂きました。

2012年秋は全村避難の富岡町から郡山で被災生活を送っている子どもと学校の先生、また、これまで喘息の診断で他の保養企画に参加できなかった小学生が入り、この年は医療スタッフに高崎医師を迎え、安心した参加環境を整えることができました。

2013年、昭和医療技術専門学校・昭和育英会の山藤理事長とのご縁から両団体のご支援をいただけることになり、新たに「中高生のための富士山プロジェクト」として共催させていただくことになりました。 同校の教職員及び学生をスタッフに、コドモイナGO(ふくしまの子どもたちのための保養プロジェクト)の学生を引率スタッフとし、福島市・二本松市・南会津町から中高生と大学生、さらに保護者の方々の参加もありました。震災から3年、自らの進路や生き方を模索していく年齢を対象に、自然という場で、人に出会い、自らに向き合う機会を持つことで、自分の道を歩んでいく力になることを願いました。

2014年は引き続き、昭和医療専門学校・昭和育英会の支援を受け開催することができました。福島市・郡山市・いわき市・そして南会津から小学生が参加。福島からは福島大学の学生が引率をしてくれました。昭和医療技術専門学校の学生スタッフたちと共に富士山で一晩を過ごし、共に活動していくなかで、自然と福島の現状や震災から得た自らの経験を語る若者たちの対話がうまれていきました。福島出身の大学生のふりかえりのなかに「福島の子どもと親は目に見えない不安、自分でも気づかない不安があると思います。富士山のFOSのキャンプで「自然と共に、いま、ここにいる」という素晴らしい瞬間を味わうことができる。それは福島に生きる子どもたちに大きな力になると思います」と語っています。「あの時はありがとうございます。あの時の経験は、いまもはっきり覚えています。いい経験をさせて頂き、ありがとうございました。弟が参加します。よろしくお願いします。」2011年秋に参加した子が中学生になり、弟の参加に手紙を添えてくれました。震災を経験し、遠く山梨を訪れた子が時を経て、いま、覚悟のある、清々しいおもいを感じます。子ども期にしか見えない風景があるならば、富士山の自然や人の出会いは、その子の原風景として、自分の人生のなかで自らを照らし励まし続ける確かな力になろうかと思っています。

2015年からは参加対象を福島に限ることなく、東日本在住の方々へ呼びかけ、遠く岩手釜石市、福島南会津からの富士山へ子どもたちがやってきました。
新宿駅から昭和医療専門学校の学生スタッフと合流。車内も和やかな雰囲気で、新しい人に出会うことは、新しい自分に出会うことでもあり、富士山への車中の旅はやさしくあたたかい気持ちでスタートしました。
富士山に初冠雪の朝、冷たく澄んだ空に凛と上がってきたご来光は格別な美しさでありました。

2017年秋、今年も富士山プロジェクトを開催できますこと。
昭和医療専門学校・昭和育英会理事長山藤さまに感謝を申し上げます。
震災から5年。東北の子どもたちと、いまというかけがえのない時を分かち合う。
FOSスタッフ、昭和医療専門学校の職員の先生方、学生スタッフ共々、富士山の集いをたのしみにしております。

開催概要へ