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【リレートーク】人生を謳歌するウォーターマン・ウォーターウーマンになろう!

人生を謳歌するウォーターマン・ウォーターウーマンになろう!

~これからサーフィンを始める人に、特に50代の人に“Never too late”~                                   

バディ冒険団代表 遠藤大哉

ハワイでウォーターマンと言えば、ビッグウェーブを乗りこなし、海のことを何でもマスターしている一目置かれる存在です。僕は、そんなウォーターマンの一人で、伝説のハワイアンライフガードであるデニス・サラス氏と出会い、彼からアロハスピリッツを授かりました。彼からもらった言葉の一つに“HOKOROKAHI”(ホコロカヒ)があります。これは”一つ“という意味で、海と一つ、仲間と一つということです。その言葉には、自然を理解し、同調し、尊ぶことという深い意味が込められています。

サーフィンはライフスタイル

僕はサーフィンをするようになって、海との繋がりを深く感じるようになり、その繋がりを大事にしたいという気持ちが益々強くなっています。僕がサーフィンにハマりだしたのは、50歳を過ぎてからなのですが、今も楽しくてたまりません。きっと死ぬまでその情熱は失われないと思います。人生後半にこんなにエキサイティングで、夢中になれるものと出会えたことは、僕にとって、最高のプレゼントに思います。サーフィン以外にも、オーシャンスイミング、カヤックフィッシング、素潜りを楽しみ、またクライミングやスキーも大好きなのですが、不思議なことにサーフィンをするようになって、他への情熱が覚めるどころか、調子がよくなり、楽しさが増しています。きっと自然とフィットする心構えや身体的レディネスが高まる効果があるのだと思います。

サーフィンとは、ライフスタイルであり、下記のことばそのものです。

「健康とは毎日よく働き、そして活気にあふれ、生き生きとした生活、優れた正しい生き方をしていることを指す。そして、それを達成するためには、正しい食生活、十分な運動、適度な休息、そしてレクリエーションとポジティブな精神的姿勢が基盤となるライフスタイルを維持することが必要である」(サーファー兼医師・ドリアン・バスコヴィッツー)

僕が目標としているサーファーの一人にロブ・マチャドという元プロサーファーがいます。彼のサーフィンは自然体でライフスタイルそのものです。そんな彼の言葉を、共有したいと思います。

「この時、もしカラダが波を求めればサーフへ。求めなければ再びベッドに入ることもあるし、ギターを鳴らしたり、ヨガやストレッチでカラダをほぐすこともある。常にカラダが何を欲しているか、それに耳を傾けて、欲求のまま動くようにしているんだ。」

「海の状況は刻々と変化し、自分のコンディションも変化する。まさに同じ状況がないなかで、その瞬間に自分をフィットさせていく。そのためには経験を積み、体内に記憶させることが必要で、異なる状況に向き合うこと自体がトレーニングになる。筋肉を鍛える上でもサーフィンの動きが体に馴染みこまないと意味がない。だから実際にサーフィンをしながら鍛えるしか方法はないと思う。つまり、サーフィンはダンスのようなもので、海とカラダはお互いがダンスのパートナーのようなもの。海と自分のリズムが合わないとうまくは踊れない。波や潮の流れを理解し、呼吸を合わせることが必要なんだ。」

「時には『ただ自然に沿うように生きられたらどんなに幸せだろう』って考えることがある。キャンプをして暮らすように、陽が昇ると目覚めて、陽が沈むと火を灯して眠りにつく。そのようなライフスタイルがある。でも今は何をするにも電気に頼る時代で、夜の街にも煌々とライトが灯されている。でも古来にあった自然サイクルで生活できる方が今は貴重なことだと思うし、とてもクールだと感じるんだ。そんな僕の夢は死ぬまでサーフィンを続けること。サーフィンへの情熱をもって最期までサーファーでいられたら、僕の人生は幸せだったと言えるね」

サーフィンに必要な身体意識

ところで、人間の体の構成成分の割合をご存じでしょうか?人間の体は、水分が50~60%、脂質が16%、糖質が1%以下、ミネラルが2~5%、ビタミンが微量でできています。つまり体は、半分以上が水からなり、その意味で、僕達人間は誰しもウォーターマンなのです!

でも、そのことを感じながら生活している人はどれくらいいるでしょうか?

野口体操の野口三千三さんは、「人のからだ、それは皮膚という生き袋の中に液体的なものがいっぱい入っていて、その中に骨も内臓も浮かんでいる」としています。そして 「ゆで卵は生卵よりよく回転する。体を使いこなすには日ごろから『皮膚に包まれた液体を実感する』ことが大切」(「原初生命体としての人間」より)と言っています。

サーフィンで重要なのは身体意識です。身体意識とは、体性感覚情報をもとに成立している「体性感覚的意識」の略語です。例えば、丹田は、そもそも潜在意識、無意識の世界に形成された意識の空間的構造であり、あたかも下腹部の中心に実態のごとく存在するが、その実態に当たるものはそこには何もありません。それが身体意識の正体です。身体意識があると、その部位やその周辺が活性化し使いやすい状態になり、この身体意識はトレーニングすることで改善することができるのです。

サーフィンに限らず、すべてのスポーツや格闘技、ダンスにおいて動きをよくするためには「センター」が重要です。「センター」とは「重力線とその延長線に沿って形成された直線上の身体意識」であり、「センター」が形成されるということは絶えず自分の重力線を意識できるということです。自分の重力を感知するには脱力することが重要であり、脱力ができないと正確にそれを感知することができません。この身体意識こそがサーフィンの極意なのです。皮膚に包まれた液体を実感できるくらい脱力ができると波に身を委ねたライディングができるようになるのかもしれません。

サーフィンはなぜ楽しいか

サーフィンはなぜ楽しいか、それは難しいからだと思います。そしてその難しさを克服したときに海と一つになれるというこの上ない歓びを実感できるからだと思います。

サーフィン用語に“STOKE”という言葉があります。これは嬉しい時、興奮したときに使われます。波は、うねりと潮と風と地形の影響を受けてブレイクの形が決まります。そもそも波は風によってつくられ、うねりとなって岸に押し寄せ、海岸で海底が浅くなったところで、ブレイクします。一番大きなエネルギーは、海が月の引力によって引っ張られる力と自転による遠心力によって生じる潮汐で、そのエネルギーは宇宙のエネルギーと言っても過言ではありません。マサさんは8000メートルの山の上で宇宙を感じていますが、海だと岸から数10mのところで、誰でも宇宙を感じることができるなんてすごいと思いませんか!

波待ちしていると、うねりの周期とリズムを体で感じ、サーフィンで海のリズムと自分の呼吸や鼓動のリズムが同調する瞬間に、僕は“STOKE”します。一度味わうと、病みつきになり、忘れられない感動を覚えます。人によって感じ方はそれぞれだと思いますが、僕の場合は、自分も知りえないエネルギーが体内に漲り、そのエネルギーが海のエネルギーと共鳴しあい、生きる喜びや生きていることを実感し、自分の健康に感謝し、幸福感で心が満たされます。

「死ぬ瞬間」の著者のE・キューブラー・ロスによると、人間は、マインド(知性)、スピリット(直感)、エモーション(感情)、ボディ(からだ)の4つの要素をあわせもち、バランスよくトータル的にアプローチすることでホリスティック(全人的)な学びが実現するとしています。

サーフィンを通して、身体だけでなく心もすべてオープンにして海とつながることで、自分の命の源泉が湧きでる回路が開かれる体験ができるのだと思います。

最高のサーフィンのための準備

どうしたら、サーフィンがうまくなるか。それは正しく準備をすることです。サーフィンには「最高のサーフィンのための準備」(ISA)が6つあります。

ピラミッドの一番下は「ファンクショナルトレーニング」で、その上に「身体的準備」、「技術的準備」、「波の使い方」、「戦略・戦術」と続き、一番上が「心理的準備」です。

「ファンクショナルトレーニング」は、機能的トレーニングで、先に述べた「身体意識」を高めることが目的です。ヨガやストレッチや体感トレーニング等によってセンターを形成し、サーフィンに使う筋肉の動きをよくします。

「身体的準備」は、ベースとなる筋力や持久力です。例えばパドリングや水泳が有効で、サーフィンの動きを体に馴染みこませることが先決です。

「技術的準備」は、「ターゲティング」(進行方向に目線を向ける)、「コンプレッションとエクステンション(スピードを得るために体を伸び縮みする)」、「ローテーション」(ターンの時の体のひねり)、「バックフットの蹴り」(ターンの時に後ろ足でボードを蹴りこむ)の4つを身に着けることです。陸でスケートボードに乗るのも効果的です。

「波の使い方」は、波の全面を使って波の力を利用することです。波の下部(下過ぎてはダメ)には、波が下から上に波を持ち上げられるリフティングフォースというパワーがあり、波の上部では重力によるスピードを得ることができます。この波のパワーとスピードを上手に使ってスピードをコントロールし、ボトムターンとトップターンのポイントとタイミングを見極めます。

「戦略・戦術」はウェーブマネジメントのことで、どんな波にのってどこで技をかけるかということです。

「心理的準備」は、120%(躊躇しない)、コミットメント(次は決めていこう)、攻撃的なマインド等、特にトップレベルのコンペティターサーファーに重要です。

上手い下手に関わらずどんなサーファーでも、上達するには、この準備プロセスに沿って取り組んでいきます。

 

海に行ったら何をすればよいのか

実際に海に入る時にすべきことは“SOAK”です。“SOAK”とは、Study、Observe、Ask、Knewのことです。Studyとは海を見て学ぶこと、Observeは海の状況を観察し、安全なエリアを見つけること、Askは毎日海に入っているローカルに海の状況を聞くこと、Knewは自分の技術のレベルを知り、限界を知ることです。これはハワイアンライフガードのデニスがジュニアライフガードプログラムのワークショップで、長年に渡りハワイの子ども達に教えてきた海との付き合い方の基本です。

海の安全レベルは人と活動内容によって異なります。技術レベルが高ければそれだけ安全レベルも高くなるので、安全面からも技術は大切です。また、自分の感覚を信じ、恐怖を感じたら、それ以上挑まないこと。ただし、サーフィンの場合、“paddling hard”と言って、行くと決めたら躊躇せずに行くという攻撃的なマインドも必要であることも覚えておきましょう。

通常は自分の限界の20~30%くらいで楽しむようにし、3つ以上のバックアップシステムを常に考えておくことが大切です。➀浮力の確保、➁救助を要請する通信機、③周囲に緊急事態を知らせる笛等を持ち合わせることをお勧めします。そして、初めての海には一人で入らないことと過信しないことが大切です。

デニスのワークショップのオープンニングでは、プログラムの安全と成功を願って神に祈りを捧げる「チャント」から始まります。この方法で人間と神の結び付きを確立するのです。因みに、仏教の世界でも、海に入る前と海から出た後に、頭を下げて海に感謝の気持ちを伝えることは意味があるそうなので、僕は、自然に対する畏敬の念と海への感謝の気持ちを忘れないためのルーティンとして、一礼を心がけています。

もう一つの魅力

僕がもう一つサーフィンに魅力を感じているのは、動的瞑想です。マサさんとも時々動的瞑想について話してきましたが、臨済宗建長寺派・独園寺第15世住職の藤尾聡允さんが面白いことを言っています。禅では、坐禅をして心を洗い清め、心を空っぽにして整えることを洗心といい、それは何も坐禅でなくても、時間を忘れて何かに没頭することと同じで、心理学的に言えばゾーンやフローと同じだと言っています。つまり無心になることは坐禅をしているのと同じ効果があり、仏教語ではそれを「三昧」というのだそうです。三昧とは一心不乱で心が一定の状態にあることを言い、同じことを何度も繰り返し、無心になって同じ作業を繰り返すのも同じだと言っています。

僕は、ずっと前から、山をもくもくと歩いている時も、海で泳いでいる時も、パドリングしている時も、コンディションが悪い時ほど、没入感を味わってきたので、腑に落ちました!

僕の場合は、どちらかというとじっとしているのが苦手なので、マインドフルネスよりもこっちの方が性に合っているようです!きっと子ども達だって同じで、静かに瞑想するより、サーフィンの方が楽しいに決まっています!無心になってサーフィンを楽しんでいることが「洗心」となって、心を整えることができたら、サイコーじゃないですか?

Never too late!

僕は、デニスと別れるとき、どうしても日本の子ども達にアロハスピリッツを伝えていくために、力を分けてほしいと、懇願しました。すると彼は、僕の手を強く握ったまま何かを語りかけてくれました。これで僕は、力を分け与えられたと勝手に思い込み、これまでたくさんの子ども達に、海の楽しみ方を伝えてきました。

そして、今は、40~50代の人たちに、伝えたいと思っています。それは、僕が50歳でサーフィンと出会ったことで、満足の基本が健康で、ワクワクするライフスタイルを手に入れたからです。人生100年時代において、60歳から75歳までの黄金の15年を輝かせるには、50歳からの準備が重要と言われています。武田邦彦さんは、第二の人生を謳歌するには、50歳から60歳までの10年間で、お金と体(健康)と恩の3つを貯めることを勧めています。お金と恩の話は割愛しますが、体について言えば、健康のためにジムで汗を流すより、サーフィンのために毎日体を整えることをお勧めします。ジム通いは、健康のためという外発的な動機づけであるため長続きしない可能性があります。また10年ジムに通っても、サーフィンがうまくなったり、泳げるようになったり、クライミングが上手になるための身体意識は高まりません!それに10年間ジムに通ったら相当の出費です。それよりも、明日のいいサーフィンするために、身体を整える毎日を継続することで身体意識を高める方が、「黄金の15年」を輝かせることにつながると思います。

レジェンドサーファーのジェリーロペスは、「この中で誰が一番上手いサーファーかは、その日一番楽しんだ人」と言っています。僕には、10年後、15年後に、FOSファミリーの皆さんが、素敵な笑顔で、颯爽と、海と一つになってサーフィンを楽しんでいる姿が目に浮かんでいます。そのための準備をお手伝いしたいと思って、このコラムを書きました!

“Never too late”

何かを始めるのに遅すぎるということはありません。ぜひ、10年後、15年後にサーフィンや冒険シーンをご一緒しましょう。そして、それまでの準備のプロセスも一緒に楽しみましょう!

*文中の写真はFOSの友人・世界的クライマーであり、カイトサーファーである鈴木英貴さんからご提供いただきました。ヒデさんのメッセージをご紹介します。「僕もクライミングの世界からサーフィン、カイトの世界に入ってそのシンプルさ、そして大自然に対しての敬意と愛情を持ってサーフィンというスポーツを愛して止まない人達の目の輝きに接して、すごく新鮮な気持ちになり、サーフィンというスポーツがホントに好きになりました。」

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