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【リレートーク】FOSの記憶 

雨けむる、ブナの森。子どもたちは、色とりどりのレインコートを着て、木の洞の中に入っている。まるで森の妖精のよう。少しとうが立った大人の妖精たちも次々に、洞の中に身をゆだねてみる。2006年春の三国山、ずな峠へのFOSのハイキングの一コマ。

この時の写真を眺めていると、雨の冷たさや森の匂い、子どもたちの声まで思い出せます。FOSのファミリーキャンプで過ごした時間は、こんなふうに、必ず、心と体を通して思い出されて、涙が出そうになります。

当時、私たち家族は、東京の自主保育の仲間たちと一緒に、FOSによく参加していました。双子山や明神山に、親子あまり関係なく、大人も子どもも自分のペースで登っていくと、不思議と心が自由になっていきました。幼い子どもをおんぶしながら、西丹沢の木々の間をやっとのことで下っていった必死さ、その先の源流で泳いだ爽快感、いのちがここにあるぞーーって叫びたくなりました。親子で参加していても、ひとり一人が自分の感覚にたって、そこに存在していられた気がします。

ベースとなっていた山中湖の戸高家や入会の森に帰ると、マサと優美の細やかな温かさを感じながら、安心して、おいしいご飯をいただき、子どもたちがじゃれあう様子を見守りながら、大人同士もよく笑いよくしゃべり、ほんとうに楽しかった!

さて、それから十数年の月日が流れ、子どもたちはまさに大人の入り口に立っています。学校や受験の息苦しさや自分の能力の壁などにぶつかる日々。面倒な思考は棚に上げ、スマホやYouTubeばかり見ている息子たちに「あんたたちはいったい何がしたいの?」と思わずにはいられません。

当時の自主保育の仲間の子たちも、いろんな壁にぶちあたり、学校を中退したり、休学したり、一念発起で留学したり…。傍で見ている親もまたモヤモヤして、なんだかんだ言いたくなるのをじっと我慢して、夜道を歩きながら涙してしまうこともあるんです。

そんな思春期の子の親となった私の、心の拠り所となっているのは、子どもたちが小さい時の記憶です。 “自分のいのちが感じるままに生きる”時間を、親子でたくさん紡いできた記憶が、ゆるぎない自信というか信頼につながっているのです。

そういう体験は、我が家だけでは決してさせられなかった。FOSがあったから、冷たい雨の中でも吹きつける風の中でも、安心して、大きな自然の中に身をおいて、子どもたちと一緒に自分の感覚に立つことができたのです。そういう時を共に過ごした大人たちから、たくさんの愛情をかけられ、見守られ育くまれてきた子どもたちが、まちがったことになるはずはないと、今、信じられるのです。

大切な子どもたちへ。あなたたちは大丈夫、社会で成功するかどうかじゃなくて、人を愛し信頼し、自然の営みの大きさを知って、感謝し、自ら人にやさしくできる、そんな大人にまちがいなくなっていってるよ。苦しいことはあるけれど、あなたが信じる方向にいのちを燃やして勇気を出して、生きていってほしい。さぁ、まずスマホを置いて、歩いてみようか、FOSでの記憶を呼び起こして!

                                                         田中 ふみよ

 

 

 

田中ふみよさんは、NPO法人 自由創造ラボたんぽぽが発行する「ありのままで~しあわせな不登校の過ごし方」という冊子に、戸高ゆうみと共に寄稿をしています。田中さん、戸高ゆうみの素敵な文章をぜひご覧ください。下記サイト「冊子お申し込みはこちら」からどうぞ。

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